子宮筋腫とは、子宮の壁にできる良性のしこりのことです。
子宮の壁は平滑筋という筋肉で構成されているため、「筋腫」と呼ばれます。
悪性腫瘍(がん)とは異なり、周囲の組織を破壊したり、他の部位に転移することはありませんが、発症すると徐々に大きくなり、下腹部の痛みや貧血などを引き起こすことがあります。
子宮筋腫は女性ホルモンの影響で大きくなることが知られており、特に女性ホルモンの分泌が活発になる20代頃から発症しやすくなります。
婦人科系の疾患の中では子宮筋腫の発生頻度は多く、小さいサイズの筋腫も含めると約3人に1人程度の割合で筋腫があると言われています。
閉経後、女性ホルモンの分泌が急激に減少すると、筋腫が小さくなる傾向があります。
大きくなると強い症状が出て日常生活に影響を与えたり、不妊症の原因になることがあるため、薬物療法や手術が必要になることもあります。
子宮筋腫の発生メカニズムは完全には解明されていませんが、遺伝子発現の異常が関係していると考えられています(2020年4月時点)。
子宮筋腫は、エストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの影響で大きくなることが確認されています。
妊娠中やエストロゲンの投与によって筋腫が大きくなることや、エストロゲンが分泌されない初潮前の小学生や乳幼児には発症しないこと、さらにエストロゲンを抑える治療や閉経によって筋腫が小さくなることから、エストロゲンが発症や成長に大きく関与しているとされています。
また、遺伝も関係しているとされ、母親が子宮筋腫を持っている場合、その娘が発症するリスクは約2.5倍になるという報告もあります。
子宮筋腫は、そのできる部位により、漿膜下筋腫、筋層内筋腫および粘膜下筋腫に分類されます
筋層内筋腫
子宮の筋肉の中にできる。筋腫の中で最も多いタイプで全体の約70~80%を占める。筋腫の発育にともない、子宮自体が増大したり変形することがあり、それによって子宮の収縮が妨げられ、月経痛が強くなることが多い。多発化しやすい。
粘膜下筋腫
子宮内膜の内側に向かってできる。発症頻度としては約5~10%程度。筋腫自体が充血したり、筋腫の発育に伴って内膜が薄く引き延ばされることにより出血しやすくなることがあり、症状は一番強く出ることが多い。
漿膜下筋腫
子宮の外側に向かってできる。症状がないことが多い。しかし、まれに有茎筋腫などができ、これが捻転を起こすことで急性の痛みが出ることがある。
子宮筋腫があっても自覚症状がない場合は、特に治療を行わず経過観察となることが一般的です。
しかし、月経量が多い、月経痛がひどいといった症状がある場合は、筋腫の大きさにかかわらず、まず薬物療法が行われることが多くあります。
子宮筋腫は女性ホルモン、特にエストロゲンの影響を受けるため、ホルモン剤を使用してエストロゲンの分泌を抑制し、体を偽閉経の状態にすることで筋腫の成長を抑え、縮小させる治療法が用いられます。
ただし、エストロゲンの抑制により、更年期障害のような副作用が現れることがあるため、長期間の服用には注意が必要です。
また、筋腫が大きく、他の臓器に圧迫を与えている場合は、筋腫を摘出するなどの外科的治療が行われることもあります。
また、「不通則痛」という言葉があり、気血の流れが滞ると痛みが生じるともされています。
漢方では、気血の巡りを改善する漢方薬がよく使われます。
これにより、滞りを防ぎながら痛みを軽減することが目的です。
もし出血が多い場合には、血の流れを改善しつつ、止血や鎮痛作用も持つ漢方が用いられることがあります。
こうした漢方薬を服用しながら、血の巡りが悪くなる原因となる体質や生活習慣を見直し、子宮筋腫ができにくい体質に改善するための漢方薬を併用することも多くあります。
子宮筋腫は筋肉のこぶのようなもので、ある程度大きくなると、完全に消失させることは難しく、一般的には西洋医学でも漢方でも、現在ある筋腫をこれ以上大きくしないための対応が主になります。
ただし、西洋医学の治療では、ホルモン剤が体に合わない方や、妊娠を希望する方にとっては、治療方法に悩むことが多いかもしれません。
漢方では、子宮筋腫の原因を気血の巡りの悪さと捉え、ホルモンバランスをなるべく崩さずに、その巡りを改善する方向で対応することが可能です。
気血の巡りが悪くなる原因は人それぞれ異なります。
例えば、
- 冷えによる血行不良
- ストレスや緊張で体に力が入り、巡りが滞っている
- 睡眠不足で交感神経が高ぶっている状態が続いている
- これらの要因が複合している場合もあります
そのため、漢方薬の使用はもちろん、生活習慣の見直しも子宮筋腫の改善には重要と考えられます。
現代はストレスが多い時代ですが、多くの女性の体にとって、思っている以上に過酷な環境かもしれません。
症状があるかどうかにかかわらず、子宮筋腫があると診断された方は、一度生活環境を振り返ってみることも大切です。
症例①(44歳、女性)
7cm大の子宮筋腫がある。腹部の圧迫感や月経痛、過多月経がつらかったので、去年から低用量ピルを服用している。ピルの服用により月経痛と過多月経はやや軽くなったが、子宮筋腫の大きさは変化なく、お腹の重苦しい感じや圧迫感は続いている。
他には頻尿気味でトイレが近い、便は軟便気味で食後すぐに便意を感じる、憂鬱感、イライラしやすい、月経前の情緒不安定雨や乳房の張りなどの症状がある。舌は淡紅色である。
証:「肝鬱気滞(かんうつきたい)」
体の諸機能を調節(疏泄作用)する『肝』の機能がスムーズに働いていない状態。
ストレスの影響により気の流れが滞り、筋腫ができたようだ。
腹部の圧迫感や憂鬱感、イライラ、月経前の諸症状などはこの体質の特徴。ため息が多い、胸脇部が張るなどの症状が見られることがある。頻尿、食後すぐの便意などは筋腫が膀胱や直腸を圧迫するために生じた症状である。
漢方の治療としては、「逍遥散(しょうようさん)」で肝気の流れをスムーズにし、筋腫ができにくい体質を作っていく。
症例②(42歳、女性)
30歳のときの検査で小さな筋腫が見つかったが、自覚症状がなかったので特に治療をしなかった。
40歳で久しぶりに検査をしたところ、筋腫は5cm大になっており、他にもたくさんの筋腫ができていると言われた。そして先日の検査では筋腫はさらに大きくなっており、8cm大と言われた。ひどい月経痛や過多月経はないが、下腹がぽっこり出ており、触ると自分でも禁酒の存在が分かる。
白い帯下(おりもの)が多く出る。排尿回数は少なめで、足がむくむ。舌には白い舌苔がべっとりと付着していた。
証:「痰湿(たんしつ)」
体内に溜まった過剰な水分や湿気である状態。
漢方の治療としては、「二陳湯(にちんとう)」で痰湿を取り除き、子宮筋腫ができやすい体質を改善していく。
症例③(35歳、女性)
月経の出血量が多く、疲労倦怠感などの貧血症状があったので検査したところ、子宮筋腫が見つかった。
大きさは6cmほどのものをはじめ筋腫がいくつかあり、手術を勧められている。自覚症状としては、月経痛や下半身の冷えがある。月経前に頭痛が生じ、肩こりがひどくなる。唇は乾燥しやすく、舌には青紫色の斑点がみられる。貧血の治療で鉄剤を服用している。
証:「瘀血(おけつ)」
血の巡りが悪くなっている状態。
精神的ストレスや、冷え、体内の水液の停滞、整理機能の低下などにより、このような体質になる。
腹部の血流が滞ることにより筋腫ができやすくなる。下腹部の刺痛、月経前の頭痛や肩こり、青紫色の斑点などはこの体質の特徴である。のぼせ、舌下静脈の怒張などの症状が見られることがある。
筋腫が子宮内側か子宮筋層内にあると、受精卵の着床や胎児の成長を妨げ、不妊や流産の可能性が高まる。妊娠中はエストロゲンが多く分泌されるので、妊娠中に筋腫が育つこともある。筋腫の手術で摘出した場合は、子宮内膜で癒着が起こり、それが不妊の原因となる場合もある。手術した場合は、その部分の子宮壁が弱くなるため、一般に帝王切開で出産することになる。
漢方の治療としては、「温経湯(うんけいとう)」で血行を促進し筋腫の治療を進める。この女性は下半身の冷えや乾燥があるのでこの漢方を使用した。
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